「シルク・ドゥ・ソレイユ」をモデルにした「カレイドステージ」を舞台に、
主人公・苗木野 そら(ソラ・ナエギノ)がスターダムにのし上がり、
ステージの花形・「カレイドスター」を目指すアニメである。
第10話「主役へのすごい壁( Facing an Amazing Wall )」
『人魚姫』の主役となったソラは、
2代目カレイドスターであるレイラ・ハミルトンの演技のコピーをしてしまう。
スポンサーのミスター・ケネスには呆れられ、アンケートは酷評の嵐だった。
- 「新しいキャストでしたが、まるでレイラさんみたいで素敵でした」
- 「なかなか良かったです。レイラ2世の誕生ですね。でも、新しい装置でレイラさんの『人魚姫』が見たかった」
???「悪いことは書かれていないけど、レイラさんのことばっかり……」
???「ソラの『人魚姫』は悪くないと思うよ……。でも、感動させることもない」
???「……それは、私の演技がレイラさんの真似だから? 私、レイラさんが作り上げた『人魚姫』を完璧に……」
???「でも、ソラはレイラさんじゃない……」
そして、ソラだけの人魚姫を作り上げる。
???「人魚姫は、魔法使いが本当に魔法が使えるか試しているんだ」
???「なぜ?」
???「魔法使いが嘘つきかもしれないからな」
???「そんなふざけたことを!」
???「いいか……最後まで見てみろ」
???「青いリボンは、波……王子に自分のことを思い出させようとしている? そんな『人魚姫』……」
観客「あの人魚姫、かわいかったねえ」
観客「うん。面白かったあ」
観客「『人魚姫』って、こんなに楽しい、お話だったんだね!」
???「ソラの人魚姫では、脇のキャストたちも生き生きしていた。型にはまらない新しいキャラクターを与えられて。カレイドステージに新しい演目が加わったな! 自分で道を切り拓く『人魚姫』だ!」
ソラは、1話で「守破離」をやりきったことになる。
ソラのポテンシャルに、恐れおののいた視聴者も多いことだろう。
作中では「ジョナサン」というオットセイのキャラクターが登場する。
2002年に耳目を集めた、多摩川のタマちゃんをモチーフにしている。
まあ、今のクソガキは知らんだろうな^ー^
サーカスフェスティバルで優勝した、
レイラの世界一のブランコ技・ゴールデンフェニックス( The Golden Phoenix )は BANK (流用カット)である。
ロゼッタのディアボロも、ほぼ同じな気がするが……。
キモオタにはロゼッタが人気だったのだろう。
ちなみに、俺っちは、ミアの声が好きである^ー^
声優は誰か知らないけど……。
ユーリ・キリアンは16話ぐらいから本性を現す(黒ユーリなどと呼ばれていた)。
だが、彼はレイラを車で送ってあげる優しさを持っている。
心のどこかに、優しかったユーリが残っていることがうかがえる。
レイラは、作中で名言・至言を連発する。
たとえば、第18話「ユーリのすごい罠」では、
???「フリーダム( FREEDOM )はね。未来を信じる若者たちの物語よ。そこには、互いに争いながらも明日に向かって力いっぱい進む姿が躍動している。私が演じているのも、そういう若者よ。自分が望む未来に、必ず手が届くと信じている。他の人物もそう……どんなに困難な状況でも何もしないで、悲しみに暮れたりはしない。そういう強さを持っているのよ。私はこの舞台の『そこ』が気に入っている」
こうしたレイラ 嬢の気高さは、そらを魅了するだけでなく、
画面の前のキモオタを虜にする。
???「ユーリ……あなた、そんなこともわからなくなってしまったの? そこに『最高の喝采』があるからよ」
???「最高の喝采……」
???「これは、私と『私の運命』との勝負よ。勝って、必ず、最高の喝采をこの身体で受けてみせる。いま引き返したら、またこんなキモチになれるかわからない……。だから、今しかないの……。これが、今の私のキモチよ」
「幻の大技( Ultimate Illusion, the great Mystical Act )」により肩を傷めたレイラは、カレイドステージを去る。
29話から、レオンとデーモンスパイラルと叫ぶ女が登場する。
レオンはテクニックの極地みたいな感じで異世界モノの主人公のようだ。
ソラがカレイドステージに再入団する40話ぐらいまでカットしても良いという意見もきく。
しかし、3クール目でも、良い話があるのも事実だ。
たとえば、第33話「汗と涙のすごいロゼッタ」とかだ。
主人公・苗木野 そらは、器械体操をやっていたらしいが、
さぞかし、有名な選手だったに違いない。
彼女の才能は、パフォーマーのほかには、
優れたコミュニケーション能力などが挙げられるが、
英語といった語学能力が最たる例だ。
彼女はプロナウンスだけでなく、グラマーも完璧だ。
このアニメの登場人物は日本語ではなく、
英語で意思疎通をとっていることを忘れてはならない。
英語圏であることは、
舞台がロサンゼルスであることからもわかる。
ここで、レイラの父が娘のレイラにあてたバースデーカードを見てもらいたい。
まごうことなき英語である。
???「ハッピーバースデー! レイラ。いつも、私の心のなかに輝いているよ。私のカレイドスター」
「かくれんぼ( hide and seek )は楽しいかい?」もそうである。
ベルギー生まれのフランスに留学していたロゼッタも英語でメールを書く。
パソコンのモニタが CRT なのも時代を感じる。
ちなみにカレイドの時代設定は2003年である。
ミアの祖母に宛てたメールは、
彼女の母国語であるオランダ語で書かれている。
第38話「天使のすごい反撃」
ソラは、パリにてユーリと出会う。
黒かったユーリではない「白ユーリ」だ!
ソラがパリに来たのは、
サーカスフェスティバル(サーカスの世界大会)にユーリとペアで出場するためだ。
いまのユーリは絵を描いている。
カレイドステージにいた頃の彼は、
観客の顔をあまり見ていなかったようだ。
そして、絵を描くにつれ、人々の笑顔の素敵さについて気づいたという。
あらゆる人の微笑みが天使なのだ。
また、笑顔を突き詰めたら「天使の絵」になったそうだ。
覚えていてほしいのが、
ユーリの名言は「笑顔を突き詰めていったら、天使になったんだ」である。
ユーリから「天使の技( the Angel's act )」をやらないかと提案される。
唐突に出てきた天使の技だが、物語で重要なファクターとなる。
後々、レオンの妹・ソフィーも「天使の技」が得意技だったとわかる。
天使の技で優勝目前だったソラであるが、
世界大会と原風景にあるカレイドステージとでは目指すステージが違うことに気づく。
悲しみのあまり、涙を流してしまうソラ。
ソラは大会を棄権してしまう。
紆余曲折の末、日本に帰国するソラ。
そらの中学生時代の旧友と話すことで、
争いではなく、みんなが楽しいステージを目指すと決心する。
40話以降は、テクニックを超えた何かをソラから感じる。
剣術の達人が剣で戦わなくなくるように、
スポ根の「解」を目の当たりにしたと解している。
第47話「舞い降りたすごい天使( Flight of the Amazing Angel )」
この話は神回であり、初代カレイドスター(ドナ・ウォーカー)が登場する。
俺っちが感涙してしまった話でもある。
話の流れとしては『白鳥の湖』の主役にソラが抜擢される。
ミアの解釈により「憎しみも愛のひとつの形」と聞かされる。
???「『白鳥の湖』には、色々な解釈があるんだけど、一番オーソドックスなのが、悪魔を倒したけど、オデットも王子・ジークフリートも二人とも死んで天国で結ばれるっていう結末ね」
???「悪魔のお姫様のオディールは?」
???「そう! それが謎なのよ! 王子を騙した後はお話から姿を消してしまうの!」
???「オディールも王子を愛していたんでしょう? オディールも幸せになれる話はないの?」
???「オディールは、オデットの中に存在する、もうひとつの人格だと考えてみたの。オデットは王子を想う『恋心』。オディールは愛を独占したい心が生んだ『憎しみ』ってわけ。対立していても、求めるものは同じ。憎しみも愛のひとつの形だと気づいて、オデットの愛は全てを包み込むほどの大きな愛に育つの」
???「憎しみも愛……」
???「オディールの憎しみ受け入れ、愛そのものに変わったオデット……それを『天使の技』で表現したいの!」
ソラは気晴らしに散歩をする。
どこもかしこも、天使推しである。
「天使」が作品の、カレイドスターの、通奏低音になってくる。
そんな折、初代カレイドスター(ドナ・ウォーカー)と出会う。
ソラは、彼女が原体験となった『不思議の国のアリス』の主演のドナであることに気づく。
もちろん、レイラもドナのファンである。
レイラが入団したときには、ドナはもう退団していたらしい。
カレイドスターのステージ生命というのは、5年ぐらいなのだろうか……?
???「耐えられなくなっちゃったの……ステージに立つことが。『誰かを踏みつけてでも登り詰めなければならない辛さ』と『いつか追い越されるんじゃないかというプレッシャー』。周りの人がみんな悪魔の心に染まっているように思えたわ。それで、ある日、逃げ出しちゃった。もう二度とステージに戻る気になれなかった……」
???「そんな……でも、アリスのステージは楽しくて……キラキラ輝いて……本当に素敵でした……。私はアリスだけはステージの上も裏も笑顔に溢れていたって信じているんです。争いも、憎しみもなかったはずだって……」
???「普通なら『そのとおりよ』って答えるんだけど……ソラはステージに立つ側の人だから、本当のことを話すわ」
???「それじゃ……」
???「ええ、私がいたたまれなくなったのは、ソラみたいなお客さんを裏切っているって思えたから……」
???「でも、私は思い違いをしていたの……それを、この子たち(盲導犬)が教えてくれた……」
???「この子たち(盲導犬)は、天使なの……」
???「天使?」
???「そう、少しやんちゃな天使たち……」
???「あの……犬が天使ってどういうことなんですか? 教えてください」
この後、ソラは目隠しをしながら盲導犬の体験をする。
???「ソラはあの子たち(盲導犬)が無理やり訓練させられていると思う?」
???「違うんですか?」
???「よく見て、辛そうに見える?」
???「いいえ。とってもうれしそう」
???「指示通りに行動すれば、私たちが喜ぶって知っているの」
???「この子たち(盲導犬)にとっては、相手を喜ばすことが最高に嬉しいことなの……」
???「周りを幸せにする……ただ、そのことだけを願っている存在……それが、この子たちを『天使』だと思う理由」
???「あの頃の私には、みんなの嫌な面しか見えなかったけど、この子たち(盲導犬)に会ってから『ああそうじゃなかったんだ』と思うようになったの」
???「ステージに立つものなら『お客さんを楽しませたい』『みんなを幸せにしたい』っていう天使の心は誰もが持っているはずだもの。ただ『自分のほうがもっとうまくやれる』っていう思いが天使の心を憎しみに変える。きっと、そらはステージを見ながら、皆の天使の心を受け取ったのね。そのときの私には見えなかったものだけど……」
???「そっか、フェスティバルのときは私にも見えていなかったんだ……。ミュートさんたちが仲間たちと夢を語っていたその目に嘘はなかった……。他の人たちにもみんな夢があって……お客さんを楽しませたいっていう『天使の心』は皆が持っていて……憎しみも争いもその裏返し……。憎しみも愛ってそういうこと……? それなら……」
天使の技というのは、憧憬に満ちた原体験や原風景であったり、
大切な人の笑顔であったり、を、観客が思い出す技なのである。
いわば、天使の技は、止揚なのだ。
第50話「避けられないものすごい一騎打ち( A Most Amazing and Inescapable Showdown )」
第50話は、モイモイと感涙してしまう。
俺っちも天使の技を見る観客のひとりだったのだと思う。
思わず、感極まってテレビの前で拍手をしていた。
ソラは天使の技でレイラと戦うことになる。
ステージを去り、
ブロードウェイでパフォーマンスをやっていたレイラが、
そらと戦うためだけに、また、カレイドステージに戻ってきたのである。
第50話は、最強に強まった最強の、カタルシスが得られるのでオススメである。
レイラとソラの技術は互角であり、
完璧な演技でしのぎを削り合う。
そして、レイラは思わず、ソラに振り向く。
レイラも「観客」になってしまったのだ。
相手の実力を認め、自ら勝負を降りる。
まさに、スポ根アニメとして満点である。
???「天使……!」
なびいているステージの幕が、まるで羽のように見えた。
まさしく、レイラには、ソラが天使に見えたのである。
ここで挿入歌である『 Ray of Light 』が流れる。
俺っちは『約束の場所へ』や『 Tattoo Kiss 』よりも『 Ray of Light 』が好きかな^ー^
「とうとう、私を乗り越えたのね。嬉しいわ」
「ソラ……あなたは今、真のカレイドスターの入り口に立ったの。これからは、そらに憧れてたくさんの新人がやってくるわ。そのときにソラがしなくちゃならないこと……挑戦者と向かい合って壁となり、やがてその時がきたら全力で戦って敗れること……今日、私が取りに来た忘れ物もそれよ。私は、ソラに敗れることなく、ステージを降りてしまった……。それがソラの自立を阻んでいた。ソラ……ちゃんと戦うことも、これからのあなたの大切な義務よ。忘れないで……。おめでとう。ソラ!」
第51話「約束のすごい場所へ( To the Amazing Promised Place )」
最終回にて、天使の技は成功した。
ソラは「愛そのものになったオデット」を表現し切ったのである。
飛び入りのパフォーマーまでが演技をし、争いのないステージ……、
真のカレイドスターのショーを、ソラは作り上げた。
ちなみに、ミアもステージに加わるが、
よく見るとトリプルイリュージョンのときの技である。
芸が細かい。
OVA 1「笑わないすごいお姫様」
時系列としては、おそらく、最終話から1年後ぐらい。
フールが見えるようになったロゼッタが主役になる。
フールの過去にも触れられる。
彼も生前は演者だったのだろう。
ロゼッタが次世代のカレイドスターになることを予感させる話になっている。
OVA 2「レイラ・ハミルトン物語」
映像のアスペクト比が 4:3 から 16:9 になる。
そらがレイラの髪を切る。
これはレイラがそらにメイクをしたときの対比だろう。
天使の技とゴールデンフェニックスを併せたような、
そらだけの「そらのゴールデンフェニックス」を完成させる。
???「過ぎ去ったことばかりを思い出している……目標となるべき未来の自分が見えない……」
???「あなたに会う前に比べて、私はずいぶん変わったわ……」
???「レイラさんが……?」
???「そうよ。私が新しい自分を掴むとき……必ずそこにはソラがいた。ソラが私を変える……」
???「わたしには……そんなことは……」
???「ソラ……だから、この髪も、どうしてもソラに切って欲しかったのよ……」
???「わたし……ずっとレイラさんに頼ってばかりで……レイラさんは、もう違う道を歩いているのに……それなのに……また、レイラさんの言葉に助けられて……だから、少しでも、力になりたいって思って……」
???「力だったら、もうたくさんもらっているわ……あなたに会えて本当に良かった……。私の人生の中にそらがいてくれたことを心の底から感謝しているわ……」
観客をひとりひとり見ているというところも、
そらの才能として挙げられる。
第1話の「うさぎさん、がんばってぇ!」がそうである。
これは、観客を見ていないメイとの対比にもなっている。
カレイドを見て、シルク・ドゥ・ソレイユに入団した人もいると聞く。
ヨーヨーのパフォーマンスでシルクドソレイユに入った日本人もいる。
そらはいつしかカレイドステージを降りるだろう。
そして、路上パフォーマーになっているかもしれない。
でも、それでいい。
カレイドは新しい地平線を示唆してくれた。
「夢は変わるものであり、夢は変わっても良い」ということだ。
これが『カレイドスター』の本当のテーマであるのだろう。
文才を発揮したミアや心臓が弱いケン、怪我によりカレイドステージを降りたレイラは、
夢が変わることを決して恐れていなかった。
ソラも新しい夢が出来たなら、新しいステージ……、
いや、パフォーマー以外の道であっても、迷わず進むに違いない。
カレイドスターは名作であり、光芒だ。
商業的な成果はどうであれ、好きなアニメだ。
だが、現実で他人にカレイドを勧めることはない。
50話と4クールなので見ないだろうし、
カレイドの良さがわからないからだ。
それと、自分の好きなアニメは心の中で敷衍したい。
正月や盆に見返したいと思う。
思えば、ケーブルテレビのキッズステーションで2003年に見て以来、
これよりも面白いと思えるアニメに出会えなかった。
『コードギアス』も好きだが、カレイドを超えることはない。
……何故だろうか?
それは、カレイドが持つ、爽やかで華やな作風や、
ステージを見る観客と同じように、
テレビの前の視聴者を楽しませてくれることだと思う。
カレイドスターの見る順番は、
- 1話から26話( TV アニメ第1シーズン)
- 29話から51話( TV アニメ第2シーズン)
- OVA「笑わないすごいお姫様」
- OVA「レイラ・ハミルトン物語」
- 小説『ポリスのすごい結婚式(ウェディング)』
がオススメである。
ドラマ CD もあるので、できれば聴いたほうがいい。
27話と28話は、総集編になっているので見なくとも良い。
2周目からは話数カッティングを駆使しつつ、
自分の好きなやりかたで見るといいだろう。
俺っちが好きなのは、
- 守破離を描いた10話の人魚姫
- 初代カレイドスターの話(第47話の盲導犬)
- 天使の技でのショーダウン(第50話)
- 最終回(第51話)
である。
小説『ポリスのすごい結婚式(ウェディング)』では、
そらの独白で締めくくられている。
「これから先、何が起こるかは誰にもわからない。だって、全ては変わっていく。ううん、それだけじゃない。わたしは変わり続けたい。だから、こう決める。これからも変わり続けよう、と。それができうる限りいい変化でありますように。祈りにも似た願いを込めて、未来のわたしに思いを馳せる。あなたは幸せでいますか。どうか幸せでいてください」
来年で(2023年)、カレイドは20周年である。
約20年前のアニメになるが、
イマのアニメでは表現できない力強さや作品の求心力は、
20年経っても、40年経っても視聴者を虜にするだろう。
日本一のアニメだと断言する。
昨今では「大人が観ても楽しめるアニメ」なんていわれている。
カレイドは、どれみよりも上の年齢層をターゲットにしているにせよ、
思春期のうちに観たほうがいい。
リアルタイムで観れた俺っちは運が良かったと思う^ー^